No.26 : 周波数分配

2011年4月1日 up

    電波を使うシステムでは、お互いが混信したり干渉が起こらないように周波数を使い分けています。各無線局が好き勝手な周波数を使われては、混信や干渉でメチャクチャになってしまう恐れがあり、 それを避けるために各国では周波数を管理する担当の役所があり(日本の場合は総務省ですね)、無線局データベースを作って管理しています。そのデータベースに登録された無線局には免許状を発行している訳です。

    もちろん、電波は国境を越えても飛びますから、国際的にも一定のルールを作っておく必要があり、また、国によって携帯電話の周波数がバラバラだとユーザにとっても困るので、例えば、国際的にこの周波数からこの周波数までは 携帯電話に使わせよう、また、この周波数からこの周波数までは電波天文用に使わせようという大まかな利用用途も取り決められています。そのように、目的別に使用周波数を決めて分けることを周波数分配と呼んでいます。

    周波数分配の大まかな枠組みは、世界中の国の代表が集まった国際会議で決められます。この会議は「World Radio Conference (WRC)」(世界無線会議) というもので、大体3~4年ごと位の間隔で開かれています。次回は2012年なのですが、前回は2007年でしたから今回は5年の間隔になってしまいました。この手の国際会議は非常に時間がかかり、約1ヵ月間の長期戦です。大体は事前の何回かの準備会合で大まかな調整はされるのですが、 時には利害関係の衝突でバトルになることもあるようですし、重要な決定が代表団の間のロビー外交で決まるようなこともあるようです。なお、WRCを開催するための事務局として、そして事前の何回もの準備会合等はITU(国際電気通信連合)という スイス・ジュネーブに本部のある国際機関(国際連合の専門機関)が担当しています。

    WRCで決めるのは、あくまで大まかな枠組みであって、各国の事情も反映された各国要望の「OR」を取ったような周波数分配にどうしてもなってしまいます。 その結果は「Radio Regulations (RR)」(無線通信規則)という、世界電気通信条約の付属文書という位置づけの文書で公表されます。それが国際ルールですので、そのルールの範囲内で各国が独自の事情を加味した、もっと具体的な周波数分配を行います。 日本の場合は、総務省が日本国内の周波数分配表を作成して公表しています。

    これが無線周波数に関する最も基本的なルールなので、この周波数分配表に逸脱したような周波数を使いたいといっても、例えば、携帯電話用に分配されている周波数帯で衛星通信をしたいと言っても 門前払いされることになるわけです。実際の免許をもらうためには、さらに、周波数安定度、送信出力、占有帯域幅、スプリアスといった様々な規制値をクリアしなければいけません。

    このように、周波数の分配は国際的な分配と国内での分配という2段階のルールで決められています。このような仕組みは一般にはほとんど知られていません。 ジュネーブにある国連のヨーロッパ本部の見学ツアーに参加した時、説明員の人が国連の組織の解説をしてくれたときに、 「WHOとかILOと専門機関がいくつもありますが、皆さんにほとんど知られていないけれど身近で重要な役割をしている機関を1つだけ紹介します。それは、ITUという機関で、ここでは、皆さんが持っている携帯電話の周波数とかが決められています。」 という趣旨の説明を(英語ですが)してくれました。私としては、ちょっと良い気分でした。