No.24 : 携帯電話の怪人

2011年1月1日 up

    「オペラ座の怪人」というミュージカルがあります。舞台も映画も見たことが無くても、♪ザ・ファ~ントム・オブ・ジ・オペラ・イズ・ゼア♪ という有名なメロディは誰しも必ずお聞きになったことがあることでしょう。 「オペラ座の怪人」の英語での原題は「The Phantom of the Opera」です。Phantomという言葉は、辞書を引くと、幻影とか亡霊とか見せかけの物とか言った意味で、「怪人」とはちょっとニュアンスが異なるように思います。 確かに、ストーリーでは人を傷つけるような役回りですから、「怪人」としても良いのでしょうが、「オペラ座のまぼろし」とでも言う方が原題のニュアンスに近いかも知れません。

    ここからが本題ですが、「ファントム」というのは、電磁環境の世界では、物理的特性が人体に近い疑似的人体モデルのことを指します。 一般的には、人の等身大の人形というより樹脂製の容器(必ずしも全体でなく、頭だけとか胴の部分だけとか)に導電率とか透磁率が人体に近い値の液体を満たしたものが多いようですが、 計算機シミュレーションに用いられる場合にはデータベースの場合もあります。

    携帯電話のような電波を出す機器では、通常の使用状態で人体に吸収される電波が基準値レベル以下になるような指針が決められています。 人体全体での指針値もありますが、携帯電話のように頭部に密着させて使う機器の場合、局部吸収指針というものもあります。 いずれも、評価は比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate)という数値で行われ、総務省の「電波防護指針」では、以下の様に定義されています。

  1. 全身平均SARの任意の6分間平均値が、
    0.4W/kg以下であること。
  2. 任意の組織10g当りの局所SAR(6分間平均値)が
    10W/kg(四肢では20W/kg)を超えないこと。

日本で製造・販売される全ての携帯電話は、この指針値内に収まっているかどうか事前にチェックされています。

    そのチェックに欠かせないものが上に書いた「ファントム」です。一番問題になるのは、携帯電話を耳に密着させた姿勢でのSARですから、 この測定には、人間の頭部の形をしたファントムに携帯電話を冶具で固定して測定されます。(ファントム内部にセンサーが入っています)。ちなみに、心臓ペースメーカの試験の際には、胴部の形をしたファントムが用いられます。

    このファントムは、いわば「ThePhantom for mobile phones」ですので、「ファントム」をミュージカルにならって「怪人」と訳せば「携帯電話の怪人」ということになるのでしょうか。

ファントムの一例