No.23 : 大転換を遂げた放送の定義

2010年12月4日 up

    先の第176回臨時国会で成立した法案の中に、放送法改正案というのがありました。新聞やテレビは改正された法案の中身として、NHKの経営委員のことや電波監理審議会 との関係とか、まあ、自分に直接関係ありそうな(マスコミのネタになりそうな)ことだけしか書かないですが、実は、今回の放送法改正では、「放送」という 定義自体を大きく変えるという、法律改正としては類まれな大転換をしているのです。(なぜかマスコミには載らないですが)

    今までの放送の定義を放送法第2条のまま記載すると、「放送とは、公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信をいう。」とあります。すなわち、この定義では、電波を使ったものしか放送とは言わないのです。 つまり、インターネット放送とかケーブルテレビとか、今年から始まったRadiko(インターネットによるラジオ局のサイマル放送)は、放送法では「放送」ではないのです。 まあ、有線テレビジョン放送法とか有線ラジオ放送法とかといった法律もあるので、実質的には有線系の「放送」にも法律の網をかぶせてはいるのですが、肝心かなめの放送法では、法律が制定されてから60年間もの間、電波メディアだけが放送でした。

    今回の法律改正では、放送の定義が電波メディア以外にも広がりました。第2条は次のように改正されています。 「放送とは、公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信(他人の電気通信設備を用いて行われるものを含む。)をいう。」 これは、有線であろうが無線であろうが、直接受信する仕組みをもつものは全部放送ですよ、と言っています。したがって、これからは、NHKはケーブルテレビで見ている人に対しても受信料を払ってくださいと堂々と主張できる訳です。 なお、上記の( )内は、いわゆる委託放送事業者の行為も放送ですよ、と言っています。これも、今までは(電気通信役務利用放送法というもので網をかぶせていましたが)本来は放送でなかったものです。

    まあ、NHKにとっては良かったのかもしれませんが、定義を広げたことにより、グレーゾーンのものも出てきそうな気がします。 例えば、ユーチューブや単なるインターネットのホームページでの情報発信でも、考えようによっては「公衆によって直接受信できる電気通信の送信」をしている、と言えるかも知れません。技術的なことを言えば、インターネット上のUDPプロトコル によるマルチキャスト通信は全部放送に分類されてもおかしくありません。 インターネット上のホームページの内容が放送番組審議会に掛けられることは無いと思いますが、インターネットであれば、その気になれば個人で放送局を作れるような時代ですから、なんだかんだと国家権力が干渉しそうな火種になるかもしれませんね。