No.22 : 電波で撮影する写真

2010年10月25日 up

    写真というのは、ご承知のようにカメラに入射する光によって撮影するものです。光は透明なガラスやプラスチックまたは金属面により進路を変えたり曲げたりする ことができるので、簡単にレンズや反射鏡が構成でき、任意の倍率で任意の位置に結像されることができます。また、古くからフィルム・印画紙での写真撮影が普及していましたし、今はCCDやCMOS画像センサーによるデジタルカメラやデジタルビデオカメラが一般的です。

    一方、電波の方はというと、光に比べて波長が何桁も大きいので、簡単には光学レンズのような高性能なものは作れません。 光の波長はだいたい0.5マイクロメートル(0.5×10-6m)位ですが、電波は今のところ実用的に扱える周波数としては100GHz位が上限ですから、波長は3×10-3mです。 つまり、約4桁違いますから、光と同じような性能を得ようとすると、1万倍くらいの大きさのものが必要になりますし、そのような巨大なレンズ等を実現したとしても、分解能は1万分の1位しか得られません。

    それでも、近距離で人間の体を撮影してPCの画面におおまかな輪郭を出すくらいの精度で良いのでしたら、電波での写真撮影も可能です。最近、世界中の空港で セキュリティーチェックの目的でミリ波スキャナーが導入されています。透過型と反射型のスキャナーがあるようですが、透過型は、早い話がレントゲン写真のミリ波版と思っていただければ良いでしょう。ミリ波は水の分子や酸素分子 (特に60GHz近辺)により大きく減衰する特徴があるので、服を着たまま撮影しても、乾いた非導電性の衣服はほぼ完全に透過され、水分を含む体の厚みに応じた画像(カラーではありませんが)が撮影できるのです。 セュリティーの目的ですから、下着に隠したような金属や爆発物の検出をするためのものなのですが、ニュース等でも話題になったように(顔の表情まではわかりませんが)女性の乳首がハッキリとわかる程度のヌード画像が得られるようです。

    一方、全く別のやり方で広範囲を比較的高い分解能で撮影する方法もあります。これは、合成開口レーダというもので、人工衛星や飛行機から主としてマイクロ波 (数GHz)の電波を左右をスキャニングしながら発射します。地上からの反射波をレーダ受信機で受けるのですが、その際に、飛行経路に沿った多数の時系列データをデジタル信号処理することによって、数100m~数100kmの範囲の地形の写真を合成的に 得ることができるものです。信号処理と合成画像作成の原理は、大きな病院にあるMRIやX線トモグラフィーと全く同じものです。飛行機からの撮影では、分解能が数m程度、人工衛星からでは数100m程度のものが実用されています。

    電波による撮影の最大の長所は、夜間でも、雲で隠れていても撮影できることです。地震や噴火、地滑り等大規模な災害現場の状況をいち早く撮影しようとしても光学写真 なら天候が回復した日中まで待つ必要があったり、噴煙で隠れて見えないようなところは噴煙が収まるまで何日も何カ月も撮影できないことがありましたが、 電波ならば飛行機さえ飛ぶことができれば、24時間いつでも撮影可能なので、大規模災害現場で活躍しています。

    ミリ波の合成開口レーダを開発して、車で走りながら街中を撮影すれば通りにいる人全員のヌード写真が撮影できないかって?確かに原理的には可能でしょうが、極めて高価なものになりそうですね。数十億円の 開発費を出せるようなセレブの物好き男性は是非チャレンジしてみてください。

スペースシャトルからの合成開口レーダの画像例(着色は人工的なのです)【出典:RFワールド誌No.4】