No.21 : 電界強度とBERの関係

2010年8月1日 up

    自治体向けの防災行政無線のシステム設計をやっている人から良く聞く話ですが、システム設計の際に、送信局(親局)設置予定の場所から実験局で電波(変調波)を 出して、受信局(子局)設置予定場所で受信し、電界強度だけでなく、C/NやBERも測定しなさいと必ず言われるとのことです。

    私自身も電界強度測定にご一緒したこともありますが、ちゃんと受信局設置予定場所付近で電測車の電動昇降ポールで八木アンテナを5m位の高さまで上げて電界強度、C/N、BERを測定していました。この作業が結構面倒で、 毎回八木アンテナを組み立てるものですから、手際良くやっても1か所で30分以上かかります。ところが、広い面積の市町村では子局が200箇所以上という場合もありますから、移動時間も含めると測定するだけで百数十時間もかかり、 とてもシステム設計として現実的ではありません。もちろん、このような市町村のご担当者はシミュレーションだけで満足するはずがありません。 しかも、最低3人がかりの測定作業百時間以上の人件費をシステム設計の費用として計上していないことも当たり前です。

    ところで、なぜBERまで測るのでしょうか? ご担当者の言い分は 「デジタル方式ではBERが一番重要な測定項目であり、フェージングが起こった時に電界強度とC/NとBERは一致しないでしょ。雑音や干渉も場所によって違うこともあるでしょ。だから電界強度だけ測ってもダメなのよ。そんなことも知らないの?」 といった具合だそうです。たしかに、フェージング時のC/N対BER特性のグラフはフェージングの無い時とかなり違います(下図に一例を示します)。

    でも、ちょっと待ってください。そもそもフェージングというのは、基本的に送信局か受信局が移動するから起こるもので、防災行政無線のように送受ともに高い ポールにアンテナを固定して通信する場合、フェージングなんか起こるはずがないのです。伝搬途中に海がある場合には海面の上下による変動はありますが、そんな特別な場合は天候も潮の満ち引きも考えると何カ月もの長期間のデータを 取らないと意味がありません。雑音や干渉(両方Nに含めるとして)だって、専用周波数帯なのですから、同じ市町村内でそんなに大きく変わる理由もないし、第一、他市からの干渉が無いように周波数チャネルを総務省が割り振っているはずです。

    電界強度で直接変わる量は受信レベル(C)であり、雑音(干渉も含める)が一定だとすると、電界強度とC/Nは1対1の関係にあります。フェージングがないとすれば、 C/NとBERとの関係も1対1の対応関係にありますから、つまりは電界強度とBERも1対1なので、基本的に電界強度だけ測ればBERまで計算できる訳です。でも、どうして固定通信のシステム設計でシステム構築前にBER測定までやらなきゃいけない、という 「神話」が生まれたのでしょうね。市町村の各担当者は無線のことは詳しくないので、どうも、総務省の各総合通信局から「BERまで測るようにしてくださいね」と指導されているとしか思えないのです。 総合通信局の各担当者もそんなに理論に詳しいとも思えないので、結局は誰に「指導」されているのでしょうか? 大きなナゾです。