No.17 : 地デジ vs エコ

2010年4月1日 up

    先日、建設中の地上波デジタルTV放送用自立鉄塔である東京スカイツリーが東京タワーの高さを抜いて日本一の高さになったとのニュースがありました。 地上波デジタルTV放送開始・アナログTV放送停波まであと1年ちょっとです。国をあげてTV放送をアナログからデジタルに切り替えるので、それ自体が失敗することは無いと思うのですが、話題の「エコ」とか「環境」の観点からみると、 とんでもない過ちを社会全体で犯しているのではないかと危惧しています。

    国は、まずアナ・アナ変換から始まって、地デジ対応のために合計数千億円もの費用を投入しています、民間でも既存の放送局を中心に東京スカイツリーのほか、送信設備更改のために莫大な費用を要しています。 ユーザの方でもこれを機会に新たにテレビを買い替える人も多いと思います。それだけの資金を投入しても、地デジが受からないエリアが残り、その不具合解消ためのCATVへの助成や衛星デジタルの再送信とかまで行われます。

    しかし、よくよく技術的に考えてみれば、全国津々浦々デジタル放送にするだけならば、衛星放送でやれば100%完璧です。衛星デジタル放送は技術的にも既に 「枯れかけた」技術なので、リスクもないし(量さえ出れば)十分に低コストで受信機が提供できるはずです。衛星では移動しながらの受信が困難ですが、移動(つまり携帯電話でのTV受信)のためだけなら、ワンセグ放送だけ実施すれば 良いのではないかと思います。ワンセグならば、「フルセグ」の1/12の帯域で済むのですから、各放送局が共同で1周波数で同時に電波に乗せるようにすれば、非常にコストは安く済みますし、必要な周波数帯域も1/12で済みますから、電波のエコ に大いに貢献します。膨大なコストがかかる「自立型電波鉄塔として世界一」のものも必要ありません。

    それにもかかわらず、世界的にも地上波でデジタル放送をやる大きな理由は、技術的な理由でなく、政治的やビジネス上の理由からなのではないでしょうか。 放送局は在京キー局を除けば、数の上で大半を占める地方局の経営規模は中小企業そのものです。アナログ停波でなくて地上波停波ともなれば、送信所は全国で1か所で良い訳ですから、存在意義が非常に薄れて、ほぼ全滅状態になることは火を見るより明らかです。

    地方局がそのエリアだけにしか見ることのできないローカル番組を作るよりも、地方局が地方色豊かな独自番組を全国向けに流すことがビジネス的に成り立てば 良いのでしょうが、そのような大いなる挑戦をやろうとする放送局は皆無でしょうね。 でも、せっかく地上波デジタルの送信設備とアンテナを更新しても、TVコマーシャルでもやっているように、光ファイバーで同じ番組が見ることができるので(現状ではサービスエリアがある程度限定されていますが)、必ずしも地デジ用の アンテナを買う必要も地デジ用のテレビを買うこともないのです。 家に光ファイバーが来ているのなら、契約するだけで簡単にPCでテレビ放送が受信できる訳ですから、どうみても、将来的には電波送信設備を有する放送局の分が悪いようですね。

    関係者には大変失礼な言い方になりますが、放送業界は未曽有の変革時期に来ているのだと思います。従来のビジネスモデルの延長でどこまで突き進むことができるのでしょうか。世界一の電波塔がバベルの塔にならなければ良いのですが。