No.6 : 無線局免許審査のための虎の巻

2009年2月1日 up

    無線局は、法令で指定されているような微弱なものや特定小電力無線機器等を除いて必ず免許の取得が必要です。もちろん、日本は法治国家ですから、各種法令に基づく 基準で審査されるわけです。おおまかに言って、申請が認められ無事免許が与えられるための大原則は以下の2つです。

  1. 法令で定める各種の基準が満足されるものであること
  2. 申請された周波数が実際に割り当て可能であること

    上の2つのうち、2. は電波資源が有限であることによります。既に満杯に割り当てられている周波数帯で新たに参入したいといっても、どうしようもない訳です。 そのため、新規に割り当て可能な周波数ができた時には、同じ目的と同じ技術基準で参入希望者を募り、割り当て可能な数以上に希望者があった場合は事前のふるい落としをせざるを得ません。1年程前の2.5GHz帯のWiMAX等ブロードバンド事業用周波数での 希望者間の激しい競争は記憶に新しいところです。

    ところで、1. の方ですが、決められた事務手続きを遵守しているかどうかの基準はもちろんですが、技術的な基準は申請を受けた総務省側はどのように審査するので しょうか。法令には法律、政令、省令とかいろいろなレベルがあり、無線関係では、電波法、放送法、電気通信事業法とかの法律が関係します。政令レベルには、電波法施行令や電波法関係手数料令とかがあり、省令レベルは たくさんありますが、技術基準で一番重要なのは「無線設備規則」です。これだけ読めばいいかというと、そうではなく、もっと細かいことは「告示」とか「訓令」とかいったものがあります。これらの体系だったルールに合致するかどうかを係官が審査 することになります。すべてに目を通せば、原理的に自分の申請が審査に合格するかどうかを自己判断することもできます。ただ、膨大な資料数で、毎年のように改訂が繰り返されていますから、見るだけでも大変な作業ですし、告示や訓令レベルは総務省 のホームページにも載っていません。いわゆる本屋さんで売っているような六法全書的な本(例えば情報通信六法)や単なる電波法令集だけでは役に立ちません。

    では、膨大なルールをどのように調べながら係官は審査するのでしょうか。そこで登場するのが、虎の巻的な本です。財団法人電気通信振興会が編集発行している「電波 法関係審査基準」という加除式の資料集があります。これに周波数ごとや目的ごとの技術基準が細かに記載されており、大変役に立ちます。また、同じ財団から「電波関係告示集」というのも発刊されており、それらを見ながら審査しているものと思われます。 と言っても大半の免許申請はそんなものを見るまでもなく簡単に処理できるものですが。

    この「電波法関係審査基準」というのはA4サイズの4穴ハードカバーのファイルに収められたもので、厚さ10cm位で重さは数kgあります。値段も1万円近くします。 また、本屋では売っていませんので、財団に直接注文する必要があります。中身は無線業界でも大半の人には無線、いや無縁の細かい事項ばかりなので、見たことのある人は極めて少数だと思いますが、なかなか面白いというか、参考になる資料集です。 具体的な無線局間の相互干渉による影響を評価するための計算式やモノグラフがふんだんにあり、衛星通信関係では、県ごとの「1分間降雨量の地域分布図」なるものまでも用意されています。本当に使うことがあるのだろうかと思えるような研究者 レベルの難しい計算式もあり、疑問に感じるところはありますが、私などはもっぱら教科書的に利用させていただいています。 アマチュア無線とかをやっている人には無線関係法令に詳しいかなりのレベルのマニアの方もいらっしゃいますが、この本を見たことのある人は、まさにマニア中のマニアでしょうね。