No.1 : 日本一のアンテナ

2008年9月5日 up

    「日本で一番高い鉄塔(アンテナ)は?」と問われると、日本人のおそらく90%以上は「東京タワー(333m)」と即答されると思われます。それで正しいのですが、10年 前まではそうではありませんでした。それまでは、長崎県対馬にあったオメガという海上保安庁が管理する船舶向け電波ナビゲーション用送信局の鉄塔が455mの高さを 誇っていました。残念ながら、GPSの普及で使われなくなってしまったので、1998年に解体されています。したがって、日本で一番地上から高い位置にあるアンテナは東京タワーのアンテナ(正確にはアナログTV放送用のNHK局の送信アンテナ)ということ になります。ただし、皆様もご承知のように、高さ610mの東京スカイツリーが建設中で、それが竣工する2011年には、一番の座を明け渡します。実は、東京タワーが日本一の高さであった期間は、昭和33年の竣工から数年間と、最近の10年間のみで、合計してもそれほど長くはないのです。

    では次に、日本で一番大きなアンテナはどれでしょうか。物理的な面積では、長野県佐久市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)臼田宇宙空間観測所にある直径64mのパラボラ アンテナということになるでしょう。これは電波天文用のアンテナで、重さが1980トンもあるそうです。パラボラアンテナは扱う周波数が非常に高いので、反射鏡の鏡面精度も非常に高く、大きな図体からは想像もできないくらい精密に作られています。私も かつて34mや26mのパラボラアンテナを職場で毎日見ていましたし、直径34mのアンテナの建設作業にも運良く遭遇しました。地上で組上げて日本最大級の自走クレーンで吊り上げる様は圧巻でした。

    ところで、結局のところ、日本一のアンテナはどれでしょうか。規模から言うと、それは文句なく、宮崎県えびの市にある海上自衛隊えびの送信所のアンテナと断言 できます。このアンテナは、海上自衛隊が潜水艦との通信用に使っている無線局のアンテナで、百数十m~2百数十mの鉄塔を8基擁し、互いの間に張ったワイヤー線および鉄塔を支える支線の一部をアンテナとしているもので、全体は約550×2200m 位の巨大な長方形になっています。数百mの高さの山間地にありますので、アンテナワイヤーと一番低い谷底との高度差は東京タワーを上回るかも知れません。九州自動車道を車で熊本から鹿児島方面に向かって走ると、熊本と宮崎の県境にある長い トンネルを抜けてすぐに左側(東側)の山の中に鉄塔が何本か見えるので、すぐにわかります。

    では、こんな巨大アンテナがなぜ必要なのでしょうか。それは、海の中に潜っている潜水艦へ指令の暗号を確実に伝える必要があるからです。海水はもちろん電気伝導度が 高く、通常時に数十mの深さに潜行している潜水艦は全体をシールド板で覆われているようなものですから、何とか届かすために極めて低い周波数と極めて低いビットレート、 そして極めて高い実効輻射電力が要求されます。送信機出力は世界各国の潜水艦通信局の例ですと数十から数百キロワット、最大で米海軍の1メガワットクラスの巨大なもの があります。周波数が数十kHzと極めて低い超長波(VLF)で、アンテナの輻射効率を少しでも高めるために巨大な実効面積を必要とするのです。

    世界に目を向けると東京タワーより高い鉄塔や建物は、数え切れない程あります。 特に米国では共同でTVアンテナ塔を建てるという習慣がないのか、各TV局が独自に600mクラスの鉄塔を立てています。(法律で高さ制限があるらしく、何十基もある ほとんどのTVアンテナ鉄塔が同じ高さです)また、中東では800m以上の超々高層ビルが建設中ですし、1000m以上のビルも続々計画中とのこと。地震国日本での超々高層ビルは難しいでしょうね。ちなみに、私は高いところが大好きです。