No.20 : 無線通信規則(RR)

2010年7月1日 up

    無線に関わっている人でも、
周波数の分配が国際的な条約に基づいて決められていることまで知っている人は意外と少ないようです。
もちろん、個々の無線機で使える周波数は、
日本の場合は日本政府(総務省)が与える無線局免許によって指定されている訳ですが、
日本政府は、独自の好き勝手な周波数を免許している訳ではありません。
例えば、AMラジオは世界中どの国で使われている受信機でも同じ周波数範囲ですし、
3G携帯電話も大抵の場合は他の国でも使うことができます。
つまり、国によらず、同じ目的の電波の周波数は同じか近い周波数が指定されています。
これは、おおまかな周波数の分配が国際的なルールに基づいて行われているからです。

    無線の電波は国境をまたいで遠くまで届くので、国際間での混信や妨害を起さないためと、
船や飛行機で外国に行っても重要な無線通信が同じように通じるように、
周波数や通信方式を世界的に統一することは非常に重要なことです。
周波数の世界的な取り決めは「国際電気通信連合憲章」および「国際電気通信連合条約」という
条約を補足する業務文書という位置づけの
「無線通信規則(Radio Regulations、略してRR)」という文書で規定されています。
条約は国内法令よりも上位のルールという位置づけですから、
日本政府も、このRRに書かれていることを逸脱して周波数の免許を与えることはできません
(条約違反になります)。

    上記の憲章に基づいて「国際電気通信連合(ITU)」というジュネーブに本部のある国際組織があり、
事務的にはその組織がRRの改版・維持・配布等の事務的作業を行っています。
(内容を改訂するには世界無線通信会議と言う全世界の無線主管庁が集まった会議での議決が必要です)
このITUという組織は、WHOとかILOといった国際組織と同様に、国連の専門機関の1つという位置づけです。
専門機関と言うのは、国連本部からは独立して運営されている
(国連への拠出金とは別の拠出金で運営されている)機関で、
ITU自体の歴史は国連よりもずっと古いものです。

    RRという文書は、本体が400ページあまりのもので
(5ヶ国語で発行されているので言語によって多少長さが違うかも知れません)、
固定業務とか移動業務とか放送業務といった
カテゴリーごとに決められた周波数分配表が全体の1/3程度を占めているほか、
遭難通信の周波数や通信手順とかも規定されています。
ただ、この周波数分配表というのは、各国間の交渉での妥協の産物ですから、
同じ周波数帯に移動も固定も放送もと言った風に多くの業務が分配されていたり、
脚注にどこそこの国だけは別目的の局の割当が可能と書かれていたりで、
何千ピースものジグソーパズルのような複雑さです。
また、衛星通信等の場合を除いて、送信出力に関する規定はありません。

    総務省の無線局免許担当者は、このRRを読みこなした上で
(ちなみに日本語訳版が過去に国内で出版されていましたが現在は絶版になっています)
日本国内の周波数分配のルールを作成している訳です。
ただ、このような条約に基づく国際ルールがあっても、各国独自の歴史を引きずっているため、
残念ながら携帯電話でもRFIDでも全世界の国で全く同じ周波数分配にはなっていません。
自国の周波数チャネルの範囲だけカバーする携帯電話機では海外ローミングに対応できないのが実態です。
通貨統合よりも周波数統合の方がずっと簡単だと思うのですが。

無線通信規則(RR)