No.18 : 宇宙開発で生まれた食品衛生管理手法HACCP

2010年5月1日 up

    今回は、直接の無線からみの話ではないですが、食品製造工程で一般的に用いられてるHACCPが
米国NASAの宇宙開発に伴って生み出されたものだということをご紹介したいと思います。
(ハサップ、Hazard Analysis and Critical Control Point)
宇宙と食品製造と何の関連もなさそうですが、
実は、宇宙食を製造するにあたり生み出された衛生管理手法なのです。
宇宙食で食あたりなどという事態は全く許されないので、人間が宇宙船に乗りこむようになってから、
宇宙食を製造するノウハウとして生まれました。

    実は、衛星部品も含めてNASA仕様の宇宙用ハードウェアを作る部品は、
宇宙用としての極めて高い品質と信頼性が求められます。
もちろん、その理由は、ほとんど全て修理不可能で、人命にかかわるものだからです。
そのため、宇宙用部品は今はどうかわかりませんが、昔は同一設計・同一製造工程の部品でも、
ロット単位で、極端な話1つのロットの99%を破壊試験までやって全数合格すれば
残りの1%が認定品として使用できる、というような世界でした。
つまり、製造工程を管理するのでなく、結果の製品を試験してほとんどがOKなら
同じロットの残りも大丈夫という考え方です。
その結果、同じ設計の部品でも、民生用一般部品と比較すると、宇宙用は桁違いに高価なものになってしまいます。

    HACCPは、同じNASAが調達するものの仕様の1つなのですが、ハードウェアとは全く考え方が異なります。
ハードウェアの管理は、いわゆる抜き取り検査で統計的に仕様を満たさない確率が
設定値(例えば標準偏差の5倍の値)以下になることが判断できる位の点数を
検査に回すことで安全性を確保するものですが、
HACCPは抜き取り検査ではなく、製造工程中の危機原因を分析して、
工程の途中でその危機原因を除けるような各工程での品質管理をすれば、
結果として製品全体の安全性を効率良く(抜き取り検査用の数を余分に生産せずに)確保できる方法です。
例えば、途中で細菌が混入する可能性のある工程があるとすれば、
その後工程で、食品を何度で何分殺菌すれば完全に細菌を死滅できるかを分析し、
その基準を毎回チェックして守るように製造する訳です。
この工程ごとの基準を守っている限り、
生産された食品は抜き取り検査せずに全数出荷しても安全性は大丈夫ということになります。
このHACCPという管理手法は現在では、あらゆる食品関係業界に広く普及しています。
マクドナルドのハンバーガーなどもHACCPに基づいた生産管理をしているはずです。

    同じNASAという組織の安全性を確保するための物品調達基準なのですが、
結果主義か過程主義かで大きく異なります。
どちらが良いかは対象物にも依存するので一概には言えませんが、両極端の面白い話だと思いませんか?
組織内での仕事のやり方も、方法にあまり口出しせずに結果主義で成果を厳しく問うか、
個々の過程を常にチェックしておいて結果はうまく行かない場合でも
きつくは問わないというやり方と取るか、どちらが良いのかわかりませんが、
多分、その担当する人の性格とかに適したやり方があるのでしょうね。
製品検査も人材育成も奥が深そうな分野です。