No.15 : 無線エネルギー伝送

2010年1月4日 up

    無線エネルギー伝送、というとまだ何となく夢物語のような言葉の響きがしますが、
小さな電力を送ることならば、いくつか実用化されていますし、
ある程度大きなエネルギーでも近距離なら実用の少し手前まで来ています。
小規模なもので普及しているのはRFID(ICタグ)とか電動ハブラシ等の充電器です。
私もかつてPHSで非接触の充電器のものを使ったことがありますが、
携帯電話やPHSの場合はいつの間にか廃れてしまいました。
多分、ACアダプタのコストの問題があったのでしょう。
充電式電動歯ブラシはどうしても水濡れ対策が必須なので実用化されていると思われます。

    大規模なものでは、太陽発電衛星のような大構想が昔あって、
大きな発電所規模の電気エネルギーをマイクロ波で地上に送ることが真剣に研究されていましたし
(今でも真剣に考えている人はいると思います)、
そんなことをすれば受電基地上空を飛ぶ鳥が焼き鳥になるのでは
というような心配がされていたことを思い出します。

    このような大規模なエネルギー伝送は、多分、夢物語のまま終わるのではないかと個人的には考えていますが、
中規模(数kWオーダー)のものはあまり遠くない時期に実用されるかもしれません。
というのは、EVと呼ばれる電気自動車やプラグインハイブリッド車が巷にあふれてくると、
家での充電方法として安全上どうしても非接触の無線電力伝送が主流になるのではないかと考えているからです。
電気自動車で使われそうなリチウムイオン充電池は極めて内部抵抗が低いので、
電圧はあまり高くないとは言え、ショートでもさせると爆発さえしますし、
金属露出面に触れると大電流で金属が一瞬で溶けることすらあり得ます。それに、
雨の中でも接点が濡れないように家庭で車に商用電源プラグを毎日接続するのは現実的ではないと思います
(プラグを毎日車に接続するというのは、
大半の家に当たり前に雨に濡れない車庫があるアメリカだけで成り立つ発想です)。

    そうなれば、例えば、薄型コイルをいつも停める駐車スペースの下にカーペットのように敷いておき、
そこに車を駐車すれば自動的に充電が開始されるというシステムが現実的です。
すなわち、数kWオーダーで距離が数十cmの中規模近距離電力伝送の実用化が一気に進みます。
波及効果として、例えば、全く線をつながない壁掛けTVとか、オフィスでは電力伝送機能付きの机
(机上のPCの電源コードが不要になるほか携帯電話も机上にお置いておけば充電できる)とかも実現するでしょう。
間違いなく、世界の主要な自動車メーカでは中規模近距離電力伝送の研究を既に本気で行っていることと思います。

    もう20年以上も前のことですが、私が研究所で無線通信の研究をしていた頃、
ある有名な電気メーカの技術者の人に、将来の壁掛けTV向けに10W位で良いから
無線電力伝送が実現するような研究をしてくれと言われたことがあります。
その時は全く取り合わなかったのですが、今となっては、先見の明が無かったことを恥じるしかありません。

太陽発電衛星の想像図の一例