No.12 : 電波の下限の周波数は?

2009年9月1日 up

    今回はできるだけ低い周波数の話をしましょう。電波法の定義は以下のとおりです。

  「電波」とは、三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう。

したがって、上限の周波数はあっても、下限の周波数はありません。

    マルコーニが活躍した無線通信の初期の頃は、主として長波帯(LF)が使われていましたが、
これは周波数の高い信号を作り出すための部品、つまり、真空管なかったり未熟だったりしたためだと思われます。
しかし、今日では特殊な用途を除いて、長波以下の周波数帯を使うことはありません。
これは、波長が長いとそれだけアンテナに大きなものが必要で、小型化できずに建設コストが大きくなるためです。
実用で通信に使われている一番低い周波数は、私の知る限り、このトリビアの初回でも紹介した、
潜水艦通信用の十数kHzという超長波帯(VLF)のものだと思います
(実用されているもっと低い周波数があれば、是非ともお教えください)。
送信出力もアンテナも異常に大きく、とても普通の通信には使えませんが、
導電性の海水で囲まれた潜水艦に伝えるという特殊な目的のため、他の手段がありません。

    次に低い周波数と思われる、40kHzと60kHzの日本標準時(JJY)ですが、
普通の時刻通報用には周波数が低すぎてあまり適当とは思えません。
これほど低い周波数で出している理由は、電離層とかの影響を受けずに
10のマイナス何乗というような精度で時刻タイミングを受信できるためです。
しかしながら、セシウム時計も昔に比べると安価になり、GPSも普及してきましたので、
(これだけ電波時計が普及したのに今さらですが)数十kHzという周波数の意義は
だんだん薄れてきているのではないでしょうか。
数十kHzだとビルの内部まで届かないので、オフィス等で電波掛け時計の位置に困っているのではないでしょうか
(実際、私のオフィスでも窓のすぐ横でしか使い物になりません)。

    さて、これからが本当のトリビア、もっと低い実用でない周波数の話題です。
私が大学から大学院を過ごした研究室は地球電磁気学教室というところで、
他の人から見るととても変わったと思われるような観測をしていました。
その1つに大気中の電界観測というのがあり、それを専門としている先生がいらっしゃいました。
大気中の電界というと、雷とかの研究が思い浮ぶのですが(そういう研究もなさっていましたが)、
観測の1つに地球規模の共振現象というのがありました。
地球のほぼ全体は電離層でおおわれているので、地表面との間で巨大な空洞共振器になっているのです。
大きな雷は巨大な電波エネルギーを発生しますが、その電波が地球を周回した時に同位相となる周波数で共振します。
(この記事を書くために調べていて初めて名前を知ったのですが、シューマン共振というそうです)
電波は30万km/sの速度で地球1周は4万kmですから、最低共振周波数は30万割る4万で約7.5Hzということになります。
実際は少し高い方にずれて約8Hzなのだそうですが、
レコーダーにハッキリと記録された波形を見せてもらった記憶があります。
私が知っている限りで最も低い周波数の電波です。

    なお、当時のレコーダーですが、電源のいらないペンレコーダーで、
(ガルバノメータとも呼ばれるもので、基本原理はアナログのパネルメータと同じです)
記録紙を動かす動力はもちろんゼンマイです。
鉄の鋳物のフレームにガラスをはめ込んだ、いかにも重そうなケースに入った
昭和初期製と思われるペンレコーダーの方が観測結果よりずっと思い出深かったですが。
なお、インクの詰まり解消用に極細の金属線が付属していました。