No.11 : 送信機よりも受信機の方が消費電力が大きいのが当たり前?

2009年8月1日 up

    表題のようなことを言うと、世間の常識からしてバカにされそうですね。
受信機は微小な電力を扱い、送信機は受信機が扱うよりもずっと大きいパワーを出すわけですから、
送信機の方が消費電力が大きくて当たり前です。
しかしながら、近年の無線機器では、必ずしも当てはまらない場合があることをご存知でしょうか。

    送信機の消費電力はほとんどが出力段のアンプまたは発振器の消費電力で決まってしまいます。
変調方式が単純なASK(Amplitude Shift Keying)やFSK(Frequency Shift Keying)だと他の回路も併せて、
例えば50%程度の電力利用効率が期待できます。
例えば、特定小電力無線機器で10mWの出力を出す送信機の消費電力は、
うまく作れば20mWほどの消費電力にできます(大抵はもっと大きな消費電力のものが多いですが)。
一方、受信機で最大の電力を食う回路は、周波数変換のための局部発振器です。
受信周波数のままで復調できれば良いのですが、
普通はもっと低い周波数(IF:Intermediate Frequency)に周波数変換されます。
その周波数変換にはミキサという回路が必要です。
近年はIC内部に組み込まれている場合が多いですが、
典型的な原理はダイオードの非線形特性を使った掛け算器です。
この回路を正常に動作させるためには、10mW前後の局部発振器出力が必要です。
という訳で、受信機にも送信機と同じくらいの出力の発振器が使われているのです。
これで、10mWクラスの機器では、基本的に受信機でも送信機でも同じくらいの消費電力であることがわかりました。
でも、表題の理由はそんなことだけではありません。

    最近のデジタル方式無線機は、常時送信しっぱなしとかいうことは、まずありません。
許可されたタイミングにバースト的に送信することがほとんどです。
つまり、送信機は時間的に何分の1とか何十分の1、場合によっては何百分の1しか動作していないのです。
それに対して、受信機は大抵の場合、システムをコントロールする局からのコマンドを
常時ウォッチしていることが多いので(全部の回路ではないにしても)高周波部分は常時動作しているのが常です。
したがって、平均すると、受信機の電力消費の方が送信機の電力消費よりもずっと大きい場合が当たり前な訳です。

    これって、何となく、野球の試合に似ていませんか。
攻撃側(送信側)は一人づつで大半の時間をベンチで座っていられるけれど、
守備側(受信側)はどこに打球がくるかわからないので、常時ボールの行方に気を使っている訳ですね。
野球というのは、高度な時分割のルールを最初から入れたデジタル方式のスポーツなのでしょうか。