No.7 : 無ガウス分布・レイリー分布・ライス分布の関係

2009年3月4日 up

    今回はちょっと難しい内容ですので、専門エンジニア以外の方は読み飛ばしていただいても結構です。
(読者を限定してしまって申し訳ありません)

    以前の回で、通信の品質は信号と雑音のエネルギー比で決まるということを書きました。
通信技術というのは、ある面で常に雑音との戦いの技術である訳ですが、
その雑音というのはオシロスコープで電圧波形を見るとわかるように、全くランダムな形をしています。
雑音電圧の分布を統計的に調べると、典型的なガウス分布(正規分布とも呼ばれます)をしています。
この分布の形はエンジニアでなくても皆さんよくご存じの図1のような釣鐘型になります。
受験生ならば誰でも知っている偏差値は、大勢のテストの点数を平均値を中心として
釣鐘型になると仮定して無理やりその統計式を押し付けて平均を50点にスライドしたものですが、
この悪名高き偏差値によって釣鐘型のガウス分布は(名前は知られなくとも)形は有名になりました。
私自身は偏差値というものを中学3年の時の学力テストで初めて知り、
当時の担任の数学の先生が偏差値を求める式まで黒板に書いて解説してくれましたが、
当時は理解し切れませんでした。

    さて、次はレイリー分布です。非見通し回線の無線の受信レベル変動の分布は一般的にレイリー分布になり、
その場合のフェージングのことをレイリーフェージングと呼びます。
都会での携帯電話の受信レベル分布が典型的です。形は図2のようになります。
なぜ、マイナスがないかと言うと、受信レベルというのは電力値であり、
雑音電圧のようにマイナスは取らないので、ゼロ以下の存在確率はありません。

     ここからが本題ですが、
「ガウス分布とレイリー分布の物理的意味とお互いの関係は?」と聞かれて、
簡潔に答えられる人は、通信の専門エンジニアの中でも非常に少数かも知れません。
難しい式は専門書に譲るとして、ここでは、簡単に理解できる物理的イメージを紹介します。
小さな矢を丸い的に向かって投げるダーツという遊び(競技?)は皆さんご存じだと思います。
競技での正式ルールを私は知らないのですが、とにかく、
的の中心に向かって無心に何度も投げることを想像してください。
さらに、的の中心点で直交する縦と横の2本の線を引き、横をX軸、縦をY軸とします。
投げた矢は座標で言うと (x, y) の点に刺さります。
何回も繰り返すと、この x または y の値の分布がガウス分布になります。
(そんなことくらい通信エンジニアなら当たり前に知っていると言われそうですね、失礼しました)
では、今度は刺さった点の中心点からの距離 r を調べてみましょう。

となりますが、この r の分布がレイリー分布となります。
中心点からの距離 r にはマイナス値はあり得ませんし、その分布は、Δr を微小値として、
半径 r の円と半径 r + Δr の円で挟まれた範囲に入る確率ですから、その円環の面積は中心点ではゼロに収束します。
また r が大きくなりすぎれば、そんな離れたところに投げる人はいないでしょうから確率は自然と減っていきます。
最終的に適当な半径で最大になる、つまり図2のような確率分布が得られることが容易に想像できます。

    最後に、タイトルにある3つめのライス分布(仲上分布とか仲上・ライス分布とも呼ばれる)ですが、
送信アンテナが見通せる場所での携帯電話や衛星通信での典型的受信レベル分布になります。
物理的イメージはダーツの矢を中心点に向かって投げるのではなく、
中心からずれたある特定の点 (xx, yy) をめがけて投げ、
距離の測定は中心点から測った時の分布になります。
つまり、2次元平面であらかじめ (x と y の両方に)バイアス値を与えた場合ということですね。

    これで、3種類の分布の相互の関係が少しは理解できたでしょうか?